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【Special Column Vol.02】
夢組と叶え組は、どうやって協力していける?(後編)
SAC about cookies 桜林直子さん

CATEGORY : JOURNAL

Special Columnでは、毎回代表の翠川と関わりのある方をゲストにお呼びして、対談をお届けします。今回は、SAC about cookies代表・桜林直子さんです。桜林さんはクッキー屋を経営する傍ら、WEBサービス『note』やtwitterなどで自分の考えを発信されています。

特に『世界は「夢組」と「叶え組」でできている』https://note.mu/sac_ring/n/naac12bbbf018の記事は、たくさんのシェアを獲得し、多くの人の賛同と共感を得ました。やりたいことがある人を「夢組」、やりたいことはないが、夢組を応援できる人を「叶え組」と呼び、双方がどう協力しあっていけるかをまとめた内容です。

本記事は前回に引き続き、夢組と叶え組がどう協力しあっていけるか、旧知の仲である桜林さんにお伺いしました。

前回の対談内容は
こちらからhttps://katalok.ooo/feature/65/

夢組と叶え組には“共通の壁”があるー

 

翠川 スタッフの当事者意識について、どう考えている?
小売業界でいうと、お客様の問い合わせ対応のときに、ブランドの代表として答えているかどうか。その場で適当に答えてしまって、お客様が混乱してしまっても、「わたしのブランドじゃないから関係ない」って態度を見せる人がいる。当事者意識がないとわたしは感じてしまう。そういう人はどうして当事者意識が持てないんだろう。

桜林さん ただ寂しいだけなのかもしれないし、自分の仕事だって思えない、何かがあるのかもしれないよ。自分のチームって言えない、人の役割だって思っちゃう、何かが。

翠川 チームに原因があるなら改善してあげればいいんだけど、常にそういう態度を見せる人もいる。それが基本スタンスなの。そういう人たちは、どういうきっかけがあれば、当事者意識を持てるようになるのか、全然わからなくて。

桜林さん 実は夢組側にも叶え組側にも、まったく同じような壁があるの。例えば、アーティストみたいに自分のやりたいことがある人って、「自分が、自分のために」って視点ばかりで物事を見てしまう。スタッフや会社のためっていう視野がなくなってしまって、自分しか見ていないことに陥りがち。これが夢組の壁。

翠川 その壁はどうやったら越えていけるの?

桜林さん 自分のためにだけやってきた人は他者に目を向けるべきだし、誰かのためにだけやってきた人は自分に目を向けることかな。自分のためにやっていないって思っていると、誰かのせいにしすぎちゃうことがあるし、自分のためだけにやっていると思えば、周りへの感謝がなくなってしまうことにもなる。どんな仕事でも、自分のためや誰かのためばかりになっていないか、バランスを取ることが大事だよね。

翠川 わたしが当事者意識が薄いと感じる人の中には、ことあるごとに「知らんけど」って言う人もいるんだけど、あれは何だろう。目標に向かって一緒に頑張っていこうと話しているときに、「こうしたらいいんじゃないですかね。知らんけど」って。

桜林さん それは叶え組あるある。人のためになっているって、一見良いことでしょう? でも、それだけになると、「あなたがやりたいんなら、やればいいんじゃない? 知らないけど」ってなる。自分の動機や、やりたくてしているっていう気持ちがなさすぎると、そうなるの。

翠川 叶え組としては頼ってほしいからね、チームの一員として。

桜林さん お互いに自覚がないんだけなんだと思う。夢組も仕事を自分がしたいこととして見せすぎちゃっている部分があるんじゃないかな。「これをこんな風にしておきたいから、やっておいて」だと、やる気が湧きにくいでしょう。本当に、99%は言い方で変わる。

翠川 夢組と叶え組のやってほしいこととやりたいこと、両方一致しているのが一番いいけど、そうじゃないことが多いもんね。実際に多いのは、夢組が「こっちがお願いしたんだから、自発的にやってよ」と思っていて、叶え組が「やらされてる」と思ってるパターン。夢組が完全に独立していて、叶え組が夢組の意向を処理するだけの部隊になっちゃってるチームね。こういうチームは不満が多いし、崩壊しやすい。
 そういうケースがある一方で、お互いが思いやり合っていて、夢組は「やりたいことをさせてあげられなくて悪いな」、叶え組は「自分がやりたいわけじゃないけど、けっこう楽しい」って思ってるっていう、理想的な形もある。

桜林さん 夢組でも叶え組でも、個人の能力に差は当然あるからね。自分の夢を発信するだけで、周りの人が賛同して勝手に付いてきてくれる夢組もいるし、ちょっとした発信を聞き取って、自分の無理ない範囲内でさっと実現できてしまう叶え組もいる。でも、そこまでじゃない人が多いから、過剰に期待してはいけない。そのためにもお互いの気持ちやできることは確認しておくといいかな。

翠川 日頃のコミュニケーションをきちんと取って、お互い気持ちのいい状態にしておきたいよね。夢組も自分が「やりたい」だけで言い逃げしてはいけないし、叶え組も夢組に寄り添いすぎて、自分が何に興味を持って楽しめるのか、忘れてはいけない。ほんの少しの違いなんだけど、パフォーマンスやモチベーションの大きな差を生むから。

夢組と叶え組は手を取り合って壁を越えるー

 

翠川 マネージメントで褒めることは大切だと思うんだけど、夢組・叶え組の間で褒めるときのコツも聞きたい。どういう風に声をかけたら、見てもらえているって感じてくれるのかな。

桜林さん 褒めることって本当にそう感じていないとできないから、褒めるのは心から思ったときだけにする。でも感謝は別だよね。自分ができないことを誰かがやってくれたときに、「ありがとう」って伝えられるでしょう? それ以外の場合って、褒めることの手前で相手に興味・関心を持っていることが影響すると思う。

翠川 その話を聞いて、あるツイートを思い出した。業務が終わったとき、「ありがとう。お疲れさま」って声を掛けられて悲しくなったんだって。きっと、一緒のチームじゃない感じがしたんだと思うんだよ。その人は並走しているつもりだったのに。それこそ、デザイナーやクリエイター、アーティストって、展示会に向けてスタッフが頑張ってくれたときに、「ありがとう。お疲れさま」って言いがちで。「ありがとう」っていい言葉だと思っていたんだけど、そういうことにもなり得るんだって衝撃を受けた。

桜林さん 実際には「ありがとう。お疲れさま」って言われて嫌な人って、そんなにいないと思うな。でも「ありがとう」って伝えた人が、日頃どうしているかによって、その意味は変わってくるよね。やっぱり、夢組の人が「みんなは自分のためにやってくれている」って思っている部分が強いと、そうなるんじゃない?

翠川 褒め方の問題じゃないのか。

桜林さん だから、スタッフから自分の感情を言ってもらえるようにするの。わたしは本当に、自分が思っていることを言ってもらう方法や場、言っていい空気だけをつくるようにしている。
 そして言ってくれたことを受け取る。スタッフに興味を持てないなら、みんなが離れていってもしょうがないと思うんだよね。たしかにスタッフが10人いて10人全員平等に関心を持つことができるって言ったら、嘘になる。でも注意を向けようと意識することはできる。なるべく、どちらかの片想いになることだけは避けるようにしているよ。

翠川 デザイナーって人に興味がそんなにないから、ものをつくっているっていうのもあるじゃない?そういう人が他人に興味を持つって、ちょっと難しいんだよね。

桜林さん その場合、一人でやる方法を考えたほうがいいかな。そういう人は誰かと仕事をすることや、人を雇ってブランドを大きくしていくことが、ストレスになってしまうから。

翠川 そういう人だと、夫婦や家族でやっていくことまではできるけど、それ以上って限られちゃうよね。夢組のそばに叶え組がいなかったら、組織をつくってやっていくのは無理だから。

桜林さん そうだね。夢組の人の一番良いところは、未来のことが見えて、こうなったらいいなって思えること。でも現状と未来の間を埋めていくのは別の能力だから、間を埋めたり、どうしたらいいだろうって考えたり、次はこうしようって言える能力がある人と組んだほうがいいよね。
 叶え組のように、そういうことを得意にしている人がいることを、まずは知ってもらえたらいいかな。

翠川 夢組ができることって、実は限られている。どんなに素晴らしいものづくりのセンスがあっても、一人でできることしかできない本当に自分のクリエイションを広めていきたいなら、叶え組の存在を認めて、一緒に頑張っていくしかないんだよね。

前回の対談内容はこちらからご覧頂けます。

https://katalok.ooo/feature/65/

 

PROFILE

桜林 直子【SAC about cookies代表】

1978年生まれ 東京都出身。2002年に結婚、出産をし、ほとなく離婚してシングルマザーになる。洋菓子業界で12年の会社員を経て2011年に独立し「SAC about cookies」を開店する。現在は自店の運営のほか、店舗や企業のアドバイザーなども行なっている。noteにて「シングルマザーのクッキー屋の話」などを投稿している。特に『世界は「夢組」と「叶え組」でできている』(https://note.mu/sac_ring/n/naac12bbbf018)の記事は、たくさんのシェアを獲得し、多くの人の賛同と共感を得ている。娘のあーちん(現在15歳)は、2012年(9歳)より「ほぼ日刊イトイ新聞」てマンガ、イラストで連載中。

http://sac-about-cookies.com/

Text 新井作文店

Edit 遠山 怜

Photo 岸本 咲子 

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