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【Economy Journal vol.01】
アート・カルチャー分野を支える
公認会計士・税理士 山内真理さん

CATEGORY : JOURNAL

“お金を稼ぐ”と端的に書くと、純粋なクリエイティブとは真逆のイメージがあるかもしれません。しかし、人を幸せにするクリエイティブも、必ず経済(人々の生活に必要なモノを生産・分配・消費する行為における社会的関係。お金のやりとり)に直結しています。今回は、会計・税務・財務などの経営支援をとおして、アート・カルチャー分野を支える公認会計士・税理士の山内真理さんを訪問。気になるけどなかなか聞けないクリエイターとお金に関するリアルな話を伺ってみました。

クリエイティブにビジネスの意識をー

山内さんは、いつ独立されて事務所を始めたんですか?

山内さん 独立したのは2011年5月頃です。アートやカルチャー分野を専門にしようと思って前職場を退職し独立したんです。ちょうど東日本大震災の直後で、さまざまな案件やイベントが中止になる一方、ソーシャルでは多くのクラウドファンディングによる復興支援プロジェクトが立ち上がってきた頃。その一方、震災という大きな転機もあり、既存ビジネスをなんとか存続させようと経営者の意識改革も進みました。多かれ少なかれ足元に横たわる財務面の問題について真剣に考える人たちも増え、会計・財務や税務について私たちが手助けできることがたくさんあると感じました。

翠川 アートやカルチャー分野に特化しているということで、クリエイティブ関連のクライアントが多いと思います。私の印象では、クリエイティブ、ことさらものづくりを仕事にしている人はお金について考えるのが苦手。自分ゴトに思っていないというか、お金に関して苦手意識を持っている人が多いですが、山内さんはどう思われますか?

山内さん 日本人は元々お金の話をすることをよしとしない国民性が強いかもしれませんが、最近ではビジネスのバランス感覚を持ちたいと熱心に勉強する人も増えてきている印象です。産業の垣根を越えてクリエイティブが役立つことがあらゆるシーンで可視化され、ビジネスチャンスが増えている時代ということも一つの要因でしょう。例えば、美術系の大学卒業後に経営を体系的に学ぼうとする、異業種のベンチャーに飛び込む、経営の参謀的な立場で活躍するなど、様々な意欲的なチャレンジが見られます。

翠川 ものづくりはどうしても最初にお金がいるので、創業時にはクリエイティブに関する助成金制度を活用する人も多いので最初は必然的にお金のことを考えます。でも、地方では特に東京に比べると事務所の賃料なども格段に安くて、さらに家内制手工業のようにしていると食べていくのに困らない稼ぎで満足しているところも、、。いまは良いかもしれないけれど、この体制のモノづくりを50、60代になっても続けていくことは体力的にも難しいことは目に見えています。だからこそ、若いうちに食べていくことを目的にするのではなく“お金を稼いで、ブランドを継続する体制作り”にシフトしてほしい。そのためのお手伝いが少しでもできないかと立ち上げたのが「KATALOKooo」です。

山内さん 売上や事業インパクトの意識問題は大切ですよね。例えば数年単位でも先を見据えた目標が見えている人、見えていない人では明らかに行動が違います。私たちの事務所を訪ねてくれる人も、ご紹介だったり、インターネット検索で見つけて頂いたりとさまざまですが、新たな資金調達や雇用、組織作りなど、言わば経験値を買うべく、目の前の経営課題解決に繋がるアクションに前向きな方も多い。

翠川 お金の経験値を高める一つの手段として、オンラインの売上も考えてもらえると嬉しいですね。小売店に販売をお願いしたり、イベントに出店したりしてブランドの認知度をアップするための施策も大切ですが、マージンの割合が大きいですから。その点、オンラインの売上は目に見えてわかりやすいということで、経営を考えるきっかけになるのではと思っています。

山内さん そういう理由もあって翠川さんは「KATALOKooo」を立ち上げたんですもんね。オンラインのショップを持つことで、ブランドの個性を大事にしつつも、様々な施策を直接試して、効果的な販売戦略を模索できる。ブランドの経営を少し客観的に捉えていくきっかけにもなりますね。

 
クリエイティブ以外を支える、外部ツールの使い方とは?

先ほどお話されていたようなクリエイターの方というのはフリーランスですか?それともすでに会社組織にしているのでしょうか?

山内さん ステージは皆さん様々ですからフリーの場合も組織化している場合もあります。個人から複数スタッフを抱える組織体制にすることは事業の成長過程で多くの人がぶつかる一つの壁で、この壁をまず越えるまでが一苦労ということも多いようです。

翠川 山内さんのところでは、そうした人事採用的なアドバイスもしているのですか?

山内さん もちろん採用戦略を財務面からシミュレートすることはありますし、沢山のクリエイティブ業種を見ているので、ありそうな落とし穴を潰しておくなど、お役立ち出来ている部分もあるかと思います。業務管理の面では、ツールが発達していき経理などのバックオフィス作業はかなり効率化しています。AIの技術がより発達すれば、こうした事務作業の自動化はさらに顕著になるでしょう。そんな時代が到来する中、私たちができることは数字の管理というより、経営者のやりたいことを叶え、あるいは事業インパクトを高めるためのリアルな経営上のアドバイスと思います。

翠川 技術の発達による便利なデジタルツールはもちろん、プロのヘルプを上手に活用することが、よりクリエイティブな仕事に従事する人たちに大切な気がします。お金に苦手意識があるなら、その苦手を助けてくれる外部ツールを活用してほしい!私も経験があるので分かりますが、お金が足りない状況というのは何に対して足りないのかよく分かります。でも、ちょっと増えてきたときには何に使えばいいのかがわからない。新しい人材なのか、既存スタッフへのリターンなのか。特にお金に対する意識が薄い人は自分自身のモチベーションが報酬ではないから、スタッフに報酬を与えることを忘れがち。そうしたことも含めて、プロの視点から客観的なアドバイスをいただけるのは嬉しいですね。

山内さん 経営者の家族、親族はじめ、クリエイティブに理解のある、身近な存在クリエイティブ以外の管理面を支え、全体として上手くバランスしているというケースもよく見かけますね。一方で、組織が経験していないような、新しい方向性の専門人材の登用は会社組織の経験値を増やし、結果的に事業や組織の発展に寄与することもあります。そうしたことを含めて一緒に考えることにはやりがいを感じますね。

持続可能なビジネスモデルとしてのクリエイティブについて

ークリエイティブと経営を両立する上で、大切なこととはなんでしょうか?

山内さん 財務的コントロールや経営管理面の強化により、新しいことやちょっと大胆なチャレンジにも積極的になれるという部分もあるかなと思います。古くからのあまり健全ではない業界慣習などには囚われず、「よいものづくりをして、よい経営をする。」そうした意識で経営に取り組む人も増えています。クリエイティブとお金、この2つのバランスは大切ですが、正解はありません。小さくても個性的で尖った存在として唯一無二であり続ける道もある。ただ、マーケティング的なことや、資金調達手法などを含め、経営全体をクリエーションや表現の一環と捉え直してみると、案外ブランド経営の真髄に自然と辿り着くのかもしれません。

翠川 個人的に好きなブランドに、オーストリアのウィーンで4代続く帽子ブランド「ミュールバウアー」があります。ここは個人商店から始まった帽子屋で、世襲制でデザイナーが継承。昔ながらの木型もあれば、モダンなデザインの帽子もある。この継承があってこそのクリエイティブが世界に展開しているところを目の当たりにすると、本当に素晴らしいなと思います。素敵だと思うモノづくりは、やはり次世代にも続けていってほしい。最初の話に戻りますが、だからこそ“お金を稼いで、ブランドを継続する体制作り”を考えてほしいし、そのためのお手伝いを私たち「KATALOKooo」ができればと思います。

山内さん どんな仕事においてもお金の感覚、言わば計数的な感覚を持つことは身を助ける場面が多いでしょう。「KATALOKooo」のようなサービスを使って、ビジネスチャンスを拡大していくことも有益と思います。一人でできないことは、外部サービスやツールを上手に活用して、大切な時間を納得いく形で使っていきたいですよね。

翠川 モノづくりも経済活動ですからね。その意識を持って、ビジネスとしてより成長させていきたい、持続可能なビジネスモデルを作っていきたいという人たちに「KATALOKooo」を利用してほしい。そして私たちもサポートしながら、ブランドと一緒に成長できていけたら本当に嬉しいですね。

PROFILE

山内 真理【公認会計士山内真理事務所 代表】
一橋大学経済学部卒。Yamauchi Accounting Office表、Arts and Law 代表理事(共同代表)。2011年にアートやカル チャーを専門領域とする会計事務所を設立し、現在に至る。豊かな文化の醸成と経済活動は裏表一体、不可分なものと考え、会計・税務・財務等の専門性を生かした経営支援を通じ、 文化・芸術や創造的活動を下支えするとともに、文化経営の担い手と並走するペースメーカー兼アクセラレータとなることを目指す。http://yamauchicpa.jp/

 

Photo

岸本咲子 http://sakikokishimoto.info

 

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